ぼくのメジャースプーン (講談社文庫) by 辻村深月

 

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

 

 fc2ブログの方で日常的な日記やらプレイしたゲームの感想やらを書いているが、その雰囲気的に読書のことを書くには適さないと常々思っていた。単にカテゴリで分けてもいいんだが、カタチから入る性格であるしそこはきっちりと分けようとか考えていたものの、最近本をまったく読めていなかったというのもありなかなか行動に移せなかった。それでようやくここ数日読書熱が再び出てきたのでせっかくなので新しくブログを開設してみた。こてこてとしたインターフェースは求めていなかったので、そこらへんシンプルなハテナブログをチョイス。というわけでこのページでは読んだ本の感想まがいのことを書いていこうと思う。

で、今回は再読本になるがこちら「ぼくのメジャースプーン」について書く。もともと最初に読んだのは四、五年前で、この作家のデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」を読んでなかなかに面白かったので他の作品も読んでみようとなった結果出会った。今回は文庫版を読んだが、初読時はたしかノベルス版を読んだと記憶している。この作家の単行本化された作品はほとんどと言ってもいいくらいには読んでいるが、簡単に言ってその中でもトップレベルにお気に入りだ。さっき読み終わったのだけれどぶっちゃけ泣くかと思った。

軽く粗筋

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。

 この物語は小学四年生の物語だ。そのことを本作を読む上で忘れてはならない。単純に言うと小学四年生である「ぼく」が、ヒロインである「ふみちゃん」のため悪の化身である男に立ち向かう、みたいな簡単な流れだ。しかしもちろんそんな薄い物語ではない。初期の辻村深月作品によく見られたように、この作品も現実に限りなく近い世界だが微かなエッセンス、ファンタジー要素が中心に柱として建てられている。つまるところ主人公の「ぼく」はとある特殊能力を持っている。その名は「条件提示ゲーム」。「○○しなければ○○することになる」といった二択のどちらかを強制的に相手に選ばせるという恐るべき能力だ。恐るべき能力だがもちろん使い方が一番重要だ。

まとめ

と書いていて思ったのだが、正直この作家の作品は実際に読んでみないとその内容というか身がうまく伝わらないだろう。理屈ではなく感覚。推理小説やらSFやらは理屈で面白いと言えるが、こういう青春小説みたいな色をした作品は読まないと伝わらない。もう身近な人は文庫を貸すから読んでほしい。うまく感情移入ができれば傑作だし、もちろん出来なければ駄作だろう。そしてハマったのならぜひこの作家の別の作品も読んでほしい。辻村作品はそれぞれがリンクしている。ので、他作品を読めば読むほど面白くなっていく。最近はいわゆる社会派と言われるような題材を多く取り扱っていて、初期ほどのグロテスクさもないので読むのならば、というより私が読んでほしいのが初期だ。少年少女が必ず通ったであろう傷を、辻村深月は描いている。だからこそその小説は真に迫り、グロテスクに見えるのだろう。しかし安心してほしい。彼女の紡ぐ物語はほとんどがハッピーエンドだ。最後にしっかりと希望を示してくれる。温かく優しい希望を。そして世界は繋がっていく。そしてそれらは未来に繋がっていく。